インド・香りの郷 カンナウジを訪ねて

―サロンに届ける“香り”を探しに―

私たちインディーハーブスでは、ヘナやハーブ製品を中心に、美容師の皆さまのサロンワークに役立つ製品を開発しています。

髪に触れる手と、お客様の心に寄り添う香り。

その香りは、施術の印象を大きく左右する大切な要素です。

近年では、多様な合成香料が登場し、香りのバリエーションは豊かになりました。

けれども一方で、それらの一部が体調不良や刺激の原因になることも指摘され始めています。

天然だから安全、合成だから危険という単純なものではありませんが、私たちは“香りの成り立ち”に向き合い直す必要があると考えました。

その想いから、このたび私たちはインド・カンナウジを訪ねました。

――インドの伝統的な香り文化が、今も静かに息づく場所です。

 


アッターと精油、そのちがい

カンナウジでは「アッター(Attar)」と呼ばれる香油が古くから作られています。

これは、花や葉の香りをキャリアオイル(主にサンダルウッド)に移していく伝統的な抽出法で、低温の水蒸気蒸留を使い、ゆっくりと香りを封じ込めていきます。

一方、私たちが日常的に目にする「精油(エッセンシャルオイル)」は、花や植物から香りの成分だけを直接取り出した揮発性オイル。

アッターのように“固定”されることはなく、より強く、よりシャープな印象を与える香りです。

つまり、

・アッターは香りが“留まる”もの

・精油は香りが“広がる”もの。

この2つの香りの世界には、それぞれの役割と美しさがあります。

 


今回の目的はローズ精油

今回私たちがカンナウジを訪れた目的は、新製品に使用するローズ精油の仕入れと調整です。

ローズの精油は、産地や気候、蒸留方法によって香りに大きな差が出ます。

そのため、現地で複数のサンプルを確認し、香りのバランスを確かめながらブレンドする必要があります。

それぞれ異なる個性を持つローズ精油を組み合わせて、目指す香りをつくり上げていくという点です。

この作業には、現地の熟練ブレンダー(調香師)が立ち会い、長年の経験と嗅覚を頼りに、ひとつの香りを導き出していきます。

その結果、サロンワークで違和感なく使える、自然で心地よい香りが完成します。

 


香りと記憶をつなぐ「小さな体験」

滞在中、ひとつの香油の小瓶を手渡されました。

蓋を開けると、なんとも表現しがたい、けれどどこかで嗅いだような…そんな“うっすら記憶にある香り”がふわりと漂ってきました。

「これは何の香油か、わかりますか?」

そう尋ねられ、しばし香りの奥を探るように鼻を傾けました。

答えは――“土の香り”

雨が降った直後の、地面から立ち上がるあの甘く、懐かしい匂い。

**「ミッティ・アッター」**と呼ばれるこの香油は、壺に素焼きの器などを入れ、水蒸気で蒸留して作られるのだそうです。

また別の日には、タバコの葉から作られた香油にも出会いました。

路上の煙のような重たさはなく、むしろ奥行きのある甘さと深みを感じる、不思議な香りでした。

こうした体験から、カンナウジの人々が日常の中の繊細な香りに意識を向け、文化として育んできたことを強く感じました。


サロンの空間に、香りという記憶を

私たちは今回の旅で、信頼できる品質のローズ精油を無事に手に入れることができました。

そして、香りの調合においても、熟練の手によって丁寧な仕上がりを確認しました。

サロンで使う製品において、香りは施術空間の“空気”をつくるもの。

お客様の印象に、そっと残るもの。

だからこそ、香りには確かな安心感と、深呼吸できるやさしさが必要です。

間もなく、皆さまにもこの香りと出会っていただける製品をご紹介できる予定です。

どうぞ、楽しみにお待ちください。