美容室倒産件数増による影響と対策

2024年1‐4月「美容室」倒産状況(東京商工リサーチ)
https://tsr-net.co.jp/data/detail/1198567_1527.html

コロナ禍を抜けたが、美容室の倒産が急増している。2024年1-4月「美容室」倒産は、累計46件(前年同期比48.3%増)に達した。同期間の比較では、2015年以降の10年間で、2018年と2019年の32件を抜いて最多を更新した。現在のペースが続くと、年間でも10年間で最多だった2019年(105件)を上回る可能性が高い。

カリスマ時代からオーバーストアー時代

美容産業は近代においてバブルに湧く時代がありました。

パーマ液が箱単位で飛ぶように売れたバブル時代の後、カリスマブームが到来します。

美容産業の黄金期と言えます。

カリスマブームに憧れた多くの若者がカリスマを目指した2000年代

そんな多くの若者達はその後独立し、オーバーストアー時代がやってきます。

全国に24万件というコンビニの数倍にも及ぶ美容室が存在する時代です。

訪れた淘汰の時代

美容業界は何度かの淘汰時代を経験しています。

リーマンショック、コロナ禍、災害など多くの苦難を経験してきました。

しかし、現在の円安物価高のスタグフレーションは桁違いのインパクトがあります。

人材難、集客、単価、など、これまで抱えてきた問題が一気に業界に襲いかかってくる時代。

実態の無い経営を続けてきた美容室は淘汰の危機に瀕しています。

社会保険未加入、低賃金、長時間労働、これらの問題が解決しない限り、経営の安定化は難しいでしょう。

淘汰の時代に生きる覚悟

これまで、美容室経営は本来やるべきことをせずとも、日銭でどうにか生きてこれました。

しかし、人件費を含むコストが利益を圧迫し、これまでのキャッシュフローが成立しなくなります。

それを改善するには、値上げによる利益確保しか道は残されていません。

顧客との信頼感を強め、無くてならないサロンであれば消費者の値上げへの納得感は得られるでしょう。

しかし、代わりの効くサロンであれば消費者は容赦なく他を選ぶことになります。

値上げするか?潰れるか?存続するには覚悟が必要です。

利益を軽視する美容室産業

美容師は技術を売る仕事であり、またクリエーターやアーティストとしての性質もあります。

自分の納得出来る表現にこそ大きな価値を持っています。

しかし、その傾向に偏りすぎた場合、利益を軽視する傾向があります。

利益とは、自分の生活を支えると同時に、次への投資にも必要なものです。

また、美容室の什器関係などは故障などが起きた場合、大きな出費が必要になります。

そして、これから税金の重さも身に感じることになるでしょう。

利益とは車のガソリンのような存在であり、事業の燃料になるものです。

燃料の尽きた車は当然走れなくなり、ただの金属の塊になります。

走らない車に誰が必要性や魅力を感じるでしょうか?

燃料の尽きた美容室は投資が行えず、低品質化の道を辿り淘汰されていきます。

美容業の二極化

私達の直営店Graciasヘナ専門店では、この経営環境の悪化を想定していました。

お陰様で、今年に入り前年売上を10%程度上回ることが出来ました。

賃上、休暇日数増、福利厚生拡充、などの対策を行うことが出来ました。

一方で、その真逆の経営状態の美容室も多く存在ます。

美容業に限ったことでは無いのですが、これまでの流れのまま来てしまった事業。

世相を把握し、対策を続けてきた事業。

この差が明確になり、更に二局化が大きくなることと思います。

美容業の対策

経営環境の悪化により、当然ながら対策を行う必要があります。

その際に客単価×客数=売上という単純な数値を追う傾向にあります。

どうすれば客単価が上がるのか?

どうすれば集客できるのか?

こういった起点から考えることが多いでしょう。

しかし、私達が追った数値は、根強いリピーターの確保です。

新規客をいくら集めても、リピートしなければ事業は成立しません。

広告費を注ぎ込めが新規客はいくらでも集客できますが、利益率は向上しません。

正規価格でも満足感を得て頂けるような対策が必要と考えています。

その為には、正確な市場判断が求められます。

美容業の市場

インスタグラムなどでは、ハイブリーチの画像投稿などにより訴求するのを見受けます。

しかし、その市場希望はどれほどのものでしょうか?

高齢者が多く、若者が少ない日本社会で、ハイブリーチの実際の需要はどこまであるのか?

その市場規模(分母)に対して、どれだけのサロン(分子)がハイブリーチを訴求しているのか?

 SNSなどで見たところ、そのバランスは非常に悪いと言えます。

若い美容師の方は、こういった技術に興味を持つことは頷けます。

また私自身も若い頃はそういった感覚を持っていました。

しかし、需要と供給のバランスが崩れると、それはビジネスとして成立しません。

特に若い美容師の方ほど、市場感覚をしっかりと持ち、見合った技術習得や接客を学んで頂くことが重要だと思います。

具体的対策は?

市場感覚を持つことによって、対策は具体化されてきます。

日本の年齢別人口は団塊世代に集中しています。

この年代はバブルを経験し、資産を一定程度保有している安定した経済状況の人が多い傾向にあります。

逆にZ世代と呼ばれる2000年以降に誕生した人達は、好景気を経験しておらず資産形成はされていません。

当然団塊世代から支持されるサロンは、Z世代から支持されるサロンよりも集客しやすくなります。

また多方面に気持ちが移りやすい若い世代をリピーター化するコストは、団塊世代よりも大きくなる傾向にあります。

しかし、団塊世代は2030年を境目に減少していきます。

結果として団塊Jr世代にも納得感が得られる必要があります。

これらの世代に共通する需要が、白髪染めになります。

高品質な白髪染めを実現できるサロンには自動的にリピーターが集まります。

ここで言う高品質とは、薬剤の種類やデザインだけではありません。

大人向けの接客や提案、仕組み作りか非常に重要と言えます。

是非、こういった角度から経営を再構築するつもりで取り組んで頂ければと思います。

昨年開催した経営ワークショップの意義

昨年私達は全国でヘナサロンの経営ワークショップを開催していました。

このワークショップでは、すでに現在の状況を予測し対応した内容で行いました。

その際にお渡した資料などがお手元に有りましたら、再度お手に取って頂ければと思います。

これから約2年程度は景気の良く無い状況が続きます。

この期間を乗り切る為にも、再構築に取り組んで頂ければ嬉しく思います。

そして来る時に、更なるステップアップを実現されることを願っております。